KAGURA

KAGURA Artist Interview Part.3 : 樋口聖典

この秋に公開したKAGURAの新しいプロモーションビデオ。もうご覧いただけましたでしょうか?

今回のビデオのためにCOLTECOが書き下ろした楽曲「BOUGER」がKAGURAで演奏できるようになりました。有料版のKAGURA Proはもちろん、無料のKAGURA Freeでも体験することができます。ビデオを見るだけでなく、KAGURAをダウンロードして、Preset Songから実際に演奏して楽しんでみてください。

今日はビデオに関わってくださったアーティストインタビューの最終回をお届け。ビデオ全体をプロデュースした株式会社BOOKの代表取締役 樋口聖典さんにお話を伺いました。樋口さんはお笑い芸人、フリーランスエンジニア、そして音楽作家を経て、現在は地元 福岡県田川市にある廃校を利活用した複合施設「いいかねPalette(旧猪位金小学校)」の運営を通じてクリエイターや起業家支援を行っています。そんな異色の経歴の持ち主が見たKAGURAの魅力とは?

樋口聖典(ひぐち・きよのり)

3ピースロックバンド「金的三番街」のギターボーカルとして福岡を中心に活動。その後、自主制作映画制作、自主企画イベントなど様々な経験を経たのち、2011年に音楽制作会社(株)オフィス樋口を設立。広告音楽や舞台音楽、映画音楽などの制作に携わる。2016年に高校時代の同級生 大井氏と(株)BOOKを設立。

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株式会社BOOK

――今回のビデオ制作にあたっては、樋口さんにはプロデューサー的な立場から関わっていただきました。

前からKAGURAには興味があったんですよね。実際に操作したこともあって、技術的にも面白いし「これ、どっかで使えないかなぁ」と思っていたんです。ただ、まさかKAGURAのプロモーションビデオの制作をやるとは思っていなかったですね。

今までやってきた音楽のプロデュースって、楽曲自体のクオリティーだけ考えていればよかったんですが、今回のビデオ制作は「よーいドン」の時点で、何からどう考えていけばいいのかってところから既にわからなかったりして、考えなければならないことが多かったです。ビデオが完成するまでは「こんな仕事やったことないぞ」っていう不安感があったのは事実ですね(笑)。

だから最初は今回のビデオの全体ディレクション、そして撮影から編集までをやった株式会社リーボの松尾くんと一緒に「KAGURAの魅力を最大限伝えるには、どんなアーティストにどんな曲でどんなパフォーマンスをしていただくのがいいのか?」を考えるところからスタートしました。

――今回はCOLTECOさんにまず楽曲のベースを作っていただいて、それをチームで作り込んで、そしてその上でダンスをつけていただくという流れでしたね。その流れの中で気をつけたことってなんでしょうか?

まずは楽曲のベースを聞いて、その上でどの音をKAGURAで演奏するのがよいかを考えましたね。

KAGURAの魅力って、感覚的な大きな動き、ファジーでアバウトな動きでも演奏できるってところだと思います。なのに複雑なリズムパターンだったり、決まったフレーズを正確に演奏するようにしてしまうとその魅力が伝わらないなぁと。

KAGURAはMIDIを扱えるので相当複雑な演奏も可能ではあるんですよ。でもそれをやってしまうと、KAGURAと楽曲全体の関連性がわからなくなる。しかも今回はバンドとのセッションだったので、ビデオを見ている人が「あれ? 今の音ってCOLTECOの音? KAGURAの音?」ってなってしまうのではないかという懸念もありました。だから決め打ちフレーズの部分はなるべくシンプルに、そして音程を演奏する部分はなるべく技巧的じゃなく、感覚的に演奏できるように組み上げました。

これはKAGURAでパフォーマンスする人にも大事な視点だと思うんですよ。パフォーマーがKAGURAを使うのって、別に複雑なフレーズを弾きこなすためにやるわけじゃないでしょう? そうではなく「KAGURAらしい演奏」「KAGURAでしかできないパフォーマンス」を考えることが大事じゃないですかね。「そのフレーズ、鍵盤だったらめっちゃ簡単に演奏できますけど……?」みたいになってしまうと本末転倒ですし。

そういう意味では楽曲の構成、つまり演出の順番も意識しましたね。楽曲の前半部分で、まずは「丸いアイコンを触ったら音が出る」っていうKAGURAの基本機能を伝えて、その後に「音が出るだけじゃなくて、音程を変えたり、エフェクトもかけられる」とMIDI操作機能を伝えて……みたいに。今回はKAGURAが出す音にも種類があったので、それを意識してもらえるような演出にしました。

――樋口さんの感じるKAGURAの魅力ってなんでしょうか?

音楽的な視点だと「身体性」と「偶然性」の2つがキーワードですね。

まずは身体性に関して言うと、いままでにない音が出せるかもしれない可能性を感じています。楽器ってそのインターフェースが持つフレーズがありますよね。ピアノならピアノっぽいフレーズ、ギターならギターっぽいフレーズとか。

たとえば、パワーコードを連打するっていう、ロックギターだと超ベタなフレーズって、ピアノだとほとんど使われないじゃないですか。つまり、フレーズって、頭だけで作っているわけではなく、身体と楽器が呼応しあって作られているんですよね。だからKAGURAでパフォーマンスするアーティストが増えれば、その中から「KAGURAっぽいフレーズ」っていうのが出てきてもおかしくないと思います。

あとは偶然性。KAGURAってピアノやギターのように「頭で鳴っているフレーズを再現する」ための楽器ではないんですよ。でもそのおかげで、人間が制御できない、考えても思いつかないフレーズが生まれる。そこが面白いです。システム自体はハイテクなのに、人間のちょっとした動きでフレーズが変わるってところはアナログで、KAGURAはこのデジタルとアナログの2つが握手をしてる感じですね。

パフォーマンスという視点で考えると「手ぶらで演奏できる」というのも結構革新的な気がします。何を持ってても、演奏できるんですよ。たとえば、他の楽器を持っててもできるし、両手で鮭を抱えてても演奏できるっていう(笑)

これができると、パフォーマンスの幅がぐっと広がると思います。

あと、個人的に見てみたいのが、パントマイムとの融合です。これ、小林賢太郎さんとかがやってくれないかな……。

――今回の撮影は樋口さんの会社が運営する福岡県田川市の「いいかねPalette」で行いました。すごく立派なスタジオと調整室があって驚きました。樋口さんの考える、いいかねPaletteを音楽や映像制作の場所とする魅力ってなんでしょうか?

KAGURAとは関係ない話になってしまうんですけど……我が施設についてのご質問、ありがとうございます!(笑)

いいかねPaletteがある福岡県の田川って場所は、超田舎なんですよ。そして施設自体が廃校になった小学校を活用しているということもあって、いいかねPaletteを訪れたクリエイターの人に話を聞くと、僕のように田舎出身の人は「子供の頃の気持ちに戻ってワクワクします」っておっしゃるんですよね。そして都会出身の方からもなぜか「はじめてなのに懐かしいです」っていう言葉をいただいたりします。

人間の思考って、自分が思っているより身体や環境に支配されてると思うんですよね。だからたまにはいいかねPaletteみたいな場所でクリエイティブなことをやるっていうのに意味があるのではないかなと。そういう環境だからこそ出るアイデアもある気がします。

あと、施設の周りに遊ぶところがないので、作業に集中できると思います(笑)

――では最後に、これからKAGURAを使ってみようかな、という方にアドバイスをお願いします。

KAGURAは切り口によっていろいろな見方ができるソフトウェアですよね。楽器でもあり、インターフェースでもあり、おもちゃなのかもしれません。だからいろんな応用がきくと思います。例えばKAGURAをMIDIインターフェースと捉えると、インスタレーションにも使えるし、スポーツ教育の現場でも使えるかもしれません。バットの素振りに音を付けてくれる、とか(笑)。そういう意味で一つの用途に限定せず、いろいろな使い方を自分で考えてみるにも面白いと思うんですよ。

ただ僕は元々音楽の人間なので「音楽制作および音楽系パフォーマンスにおけるKAGURAの可能性」を模索する人がたくさんでてきてほしいなと個人的には思っています。今、「KAGURA演奏者」を名乗ってる人っていないですよね? 「ギタリスト」「ピアニスト」「ドラマー」に続く、「カグラー」っていう職業で売れるチャンスですよ! 楽しみにしています!(了)

3回にわたってお送りしてきたKAGURA Artist Interview、いかがでしたでしょうか? 第1回、第2回を読み逃している方はぜひ下記リンクから読んでみてくださいね。

KAGURA Artist Interview Part.1 : YURI, chisa

KAGURA Artist Interview Part.2 : COLTECO